ICT教育

ICT教育1人1台端末が授業で使われない原因を考察する

下記のような記事がありました。

  山梨県内の公立小学校 1人1台端末導入後 約2割の教諭「授業で全く使用せず」

UTYテレビ山梨

自分がICT支援の立場で見てきた学校では少し状況が違っていて「全く使っていない」先生はいませんでした。

なぜいなかったのか。その理由として、

  • サポート体制
  • 失敗しても良いから使う文化

が挙げられます。

サポート体制

自治体が積極的に学校に対してICT支援という専門職を供給してきたこと。一人一台初年度であった今年度は初期段階からICT支援員を各学校に配置しました。ICT支援員が授業に同席して先生のサポートをして、ICT活用の1歩目を先生と一緒に踏み出せたのが重要だったと思います。

なお、山梨県も記事の調査期間におけるICT支援員の公募がでていましたので、サポート体制はあったものと推測されます。

失敗しても良いから使う文化

理由の二つ目は失敗しても良いからICTを授業で活用しようとする文化が醸成されていたこと。とにかく回数を増やすことで、良い結果がでた事例、悪い結果になった事例の両方があつまります。ただし、初年度に集まった事例を翌年度以降の授業設計に活かせるかどうかは現時点未知数であり、今後評価されることでしょう。

パソコン・タブレットの活用が進まない原因

サポート体制と文化があってもそれでも活用が進まない課題は残ります。

それは、ICTがなくても授業は成立すること。これまでは教科書と紙のノート、プリントで成立してきました。むしろ慣れています。授業はスムーズに進みます。パソコンが起動しない、ソフトウェアが起動しない、などのトラブルに見舞われて、トラブルシューティングしている間に大事な授業時間が奪われます。児童の学びの時間を失ってしまうことは先生に大きなプレッシャーとストレスを与えます。リスクを回避するためにタブレットを使わなくなることが考えらます。

一方で使わなければ慣れないというのも事実です。失敗してもトラブルに見舞われても外部の支援を受けながら使って慣れていく必要があります。トラブルが発生したときに、トラブルシュートをしすぎない、ある程度の割り切りも必要になります。

また、今後議論を深める必要があるのは「なぜICTなのか?」という基本的な問いに対する回答ではないでしょうか。どの授業のどの場面で使い、どの場面では使わないのか。現時点この回答は先生(学年)の個別判断に依存しています。よって先生(学年)によってばらつきがでます。

ちなみに、先生の年齢による活用の差はあまり無いように感じました。アナログ型授業での経験豊富な先生でもICTを使うひとは使います。一般的に考えられがちな世代ギャップは個人的には大きくないのではないかと。

一人一台端末が授業で使われない原因として、先生のスキル不足が語られるのをよく目にします。しかし、上述のとおりスキル不足以外にも活用を阻む原因があるものと、エンジニアの立場から公教育の現場を見て思います。