システム開発の委託先を決定する際の評価基準について考えてみます。
タイミングとしては、提案依頼を送付した会社から提案書を受領し、面談などを経てシステム開発の委託先を1社に絞り込むための評価基準サンプルをあげてみたいと思います。
定量的な評価基準
はじめに定量的な評価基準です。5段階などの尺度評価がおもに用いられます。定量評価は結果に対して客観的な評価が可能になり、評価ではよく用いられます。
- プロジェクトの理解度
- 要求仕様の実現程度
- 製品の使いやすさ
- 将来の変化にたいする柔軟性
- 会社の信頼性
- メンバーの信頼性
- プロジェクト管理の実現程度
- 運用・保守サービスの実現程度
- 価格の妥当性
プロジェクトの理解度
プロジェクトの背景や目的、期待していることなどをどの程度理解していると考えられるかを評価します。
提案書に書かれた目的達成のための方針や実現策などに注目して評価します。
要求仕様の実現程度
提案依頼時に示した要求仕様をどの程度満たせていると考えられるかを評価します。評価基準のなかでも核となる部分です。
要求仕様すべてを一つづつ評価するケースもあります。これはかなり細かな評価です。
また要求仕様をいくつかのグループに分けて、グループごとに評価することもあります。いずれにしても、導入する製品・サービスがどの程度要求を満たせているか評価します。
これは提案書に書かれた機能や面談時に聞いた内容をもとに充足度合いを推定します。
製品の使いやすさ
ユーザーインターフェースのわかりやすさ、馴染みやすさなどを評価します。また、ボタンを押したときの反応や複数デバイスへの対応などを評価します。
デスクトップPC、モバイルノートPC、スマートフォン、タブレット、ハンディーターミナルなど自社で使うデバイスへの対応度合いや使いやすさを評価します。
提案書に記載された画面イメージや面談時に見せてもらった実際の画面などをもとに点数をつけます。
将来の変化にたいする柔軟性
将来に向けて業務や事業が変化していくことはよくあります。将来仕事のやり方や商流が変化したときに、標準機能で可能な選択肢とカスタム可能な範囲、カスタム方法について評価します。
カスタマイズの柔軟性は提案書に書いてもらうか、面談時に質問します。またユーザー側でできるカスタマイズ範囲と委託して開発してもらう範囲を知っておくことも重要です。
会社の信頼性
会社の規模や財務状況などの安定性をはじめ、製品の導入実績やパートナーの多さなどによって委託会社を評価します。
会社の状況は上場企業であればIR資料を、非上場企業であれば帝国データバンクのデータなどに基づいて評価します。
また製品の導入実績や提案書あるいはホームページに掲載された導入事例にもとづいて評価します。なお、過去に導入した会社ですでに製品を使用していない会社の場合もありますので注意が必要です。
メンバーの信頼性
導入・開発に携わってくださる委託会社のメンバーについて評価します。メンバーの実績や人柄など、短期・長期のプロジェクトをともにする仲間として一緒に続けられそうかを推し量ります。
実際に面談してみての評価が主になります。提案書ではメンバーの経歴や実績があれば評価の検討材料になります。
プロジェクト管理の実現程度
コミュニケーションや進捗管理、課題管理、品質管理などプロジェクト管理に対する手法や姿勢などを評価します。
提案書に記載されたプロジェクト管理で使用するツールや会議体のありかた、その他手法をもとに評価します。
運用・保守サービスの実現程度
運用保守に対して事前に要望をあげていればその充足度合いを評価します。運用保守契約はプロジェクト開始後にあらためて要件定義することになります。
提案書に書かれた運用保守サービスの内容を見て評価します。
価格の妥当性
提案金額に対して評価します。開発費用(初期費用)と運用費用(ランニング費用)に分けて評価できます。また開発費用はパッケージなどの製品にかかる費用と、メンバーなどの人にかかる費用に分けることができます。
予算が事前に決まっていればそこからの上下で評価、あるいは相対的に他社比較で評価することができます。
定性的な評価基準
つぎに定性的な評価基準です。コメント形式で評価を書いていきます。評価結果を集計したり順位付けしたりはできませんが、定量的な評価だけでは言い表わせないことを書いていきます。
さほど細かく基準を分ける必要はなく、率直なコメントを残せる項目が良いと思います。
- 良いと思うこと
- 悪いと思うこと
- 聞きたいこと
良いと思うこと
製品や会社、メンバーなど定量評価で点数付けした項目に対するコメント、あるいは定量的な評価項目で伝えきれなかったコメントで、良いものについて書きます。
悪いと思うこと
製品や会社、メンバーなど定量評価で点数付けした項目について、悪いと思うことをコメントします。
また漠然とした不安や懸念点なども書いておきます。
定量的な評価ではある程度点数よく付けたものの、どうしても引っかかる項目がある、譲れない懸念事項があるときなども書いておきます。
聞きたいこと
まだクリアになっていない点は質問事項として挙げておきます。評価期間に余裕があれば早めに聞いておくようにします。
まとめ
以上、委託会社を評価する基準例についてあげてみました。
評価項目は多いと評価に時間がかかったりひとつの評価が雑になったりしがちです。一方で少ないと評価の信頼性が低くなったり決め手にかける場合がありますので注意が必要です。
また評価方法としては、上記の評価項目をひとつのシートにまとめ、点数付けするケースが多いです。