システム企画

他社の先行事例をしらべてみよう -社内システムの導入企画-

社内のシステム、たとえば基幹システムを入れ替えるとき。

入れ替えを決めたものの、どこから手をつけていこうかというはじめのフェーズ、あるかと思います。

現状の業務フローを可視化することから? 課題を掘り下げることから?

いろいろやるべきことがあるシステム企画の段階において、他社の先行事例を調べてみるのも良いのでは、という話について書いてみました。

先行事例ってなに?

はじめに先行事例とはなにか、です。

先行事例とは、入れ替えの対象となっているシステム領域における導入事例のことです。

先行とつけたのは、自社よりも先に導入しているため、そのように命名しました。

基幹システムであればたとえば「販売管理システム」といった領域があります。

この領域について、可能であれば同業種の導入事例が先行事例としてのぞましいです。

探し方としては、製品が決まっていれば該当製品の先行事例を探し、製品が決まっていなければ該当領域を製品横断で先行事例を探していくとよいでしょう。

なぜ先行事例を調べると良いのか?

では、なぜ先行事例を調べることが良いのか?という点について考えてみます。

それは、自社のシステム開発において他社事例から学べるから、ということになるのですが、もう少し具体的な便益をあげてみます。

  1. 新システムの方向性が見えるから
  2. 自社の位置づけがわかるから
  3. リスクを抑えつつリターンを狙えるから

ひとつずつみていきましょう。

新システムの方向性が見えるから

これがもっとも大きい便益かもしれません。

どこから手をつけていこうか、と迷ったときに、自社が取りうる選択肢を見いだせるメリットは大きいと思います。

他社の先行事例を調べることで、

「A社は基幹にXシステムを導入したのか」

「B社に聞いたら基幹にYシステムを導入して3年ほどかかったらしい」

などを把握できます。

このときA社やB社が自社に近い立場であれば、XやYというシステムが導入の選択肢に上がるでしょう。

こうして先行事例を調べることで、自社が取りうる選択肢を見いだせる便益があります。

自社の位置づけがわかるから

他社の先行事例を調べると、自社の位置づけを把握できます。

自社の位置づけというのは、具体的に言うと自社がどのくらいの予算をかけてどのくらいの機能を求めるかを粗めの粒度で把握できるということです。

下図のサンプルを書いてみました。

このサンプルではB社がもっとも価格が高く機能が豊富なパッケージYを導入し、A社がもっともリーズナブルなXシステムを導入したことが先行事例の調査で判明した例を示しています。

当社はYを購入するほどの予算は難しいが、XやZよりは予算をかけて機能を追求したい、といった位置づけのイメージをもつことが可能になります。

もちろんシステムを価格と機能量だけで判断することはできませんが、粗めの粒度でどのあたりを狙いに行くかを判断する指針にすることができます。

リスクを抑えつつリターンを狙えるから

社内システムの場合は、新規性よりも安定性や実績が重視されます。

他社が実際に導入したシステムを知ることで、そのシステムの良い点や悪い点、開発・導入会社の良い点・悪い点が把握できることがあります。

なかには失敗に近い事例にあたることもあるでしょう。

再現性のありそうな失敗事例であれば回避するのも一手ですし、リスク移転もしくは許容できるか、など事前に戦略を想像することができます。

このように先行事例を調べることで、成功要因と失敗要因を把握できるため、リスクをおさえつつリターンとなるシステム導入効果を得やすくなるといえます。

先行事例の調べ方

つぎに、先行事例をいかに調べるか、について考えてみましょう。

先行事例の調べ方には下記の方法があります。

  • IT製品会社が公開している事例集を見る
  • ITメディアが提供している事例を見る
  • ユーザーに聞きに行く

IT製品会社が公開している事例集を見る

IT製品を開発あるいは販売している会社は事例を公開していることが多く、インターネットの検索で比較的かんたんにアクセスできます。

公開事例をみることで、その製品の導入企業の業種や規模感などを把握することができます。また、解決したかった課題や導入までの期間について触れた記事もあります。

かんたんにアクセスできるというメリットがある一方、気をつけたいこともあります。

それは、PRが目的のため良いことを切り取って書かれている可能性があることと、現在もその企業が使用しているかは不明であることです。

IT製品会社が事例を公開するのは実績をアピールすることで次のユーザーを開拓することが多いため、基本的には導入して解決できたこと、製品の良いところがフィーチャーされます。PRである点は割り引いて見る必要があります。

また、導入事例は過去からの積み上げで記事になっていることが多く、検索をしている時点でその製品を使っているかどうかはわかりません。

ITメディアが提供している事例を見る

ITメディアによっては事例をまとめているサイトもあります。

たとえば、

このようなサイトでも事例をみることができます。

ITメディアが提供している事例のメリットは製品を横断的に調べられることです。「人事」や「生産管理」など業務領域をキーにして事例を見られます。

ユーザーに聞きに行く

この方法がもっとも正確に真実な情報を得られると思います。

システムを実際に導入して運用しているユーザーにヒアリングしに行きます。

仮にでも製品が決まっていれば、付き合いのあるIT企業の伝手を頼ってユーザーを紹介してもらう手もあります。

実際のユーザーは製品販売会社とは違って、製品の良いところと悪いところをフラットな立場で話してくれることが多いです。

お付き合いのある同業の取引先や知り合いの会社など伝手を頼りにヒアリングにいけると良い情報にアクセスできると思います。

なお、お付きあいのあるIT企業にユーザーを紹介してもらうという方法もあります。

先行事例のまとめかた

さて、先行事例を入手した後、どのように整理していこうかという話です。

先行事例を調べる目的は、自社のシステム導入の方向性を見出すことなので、自社の選択肢として「あり」か「なし」かを判断していくのが良いのではないかと思います。

A社がXシステムを導入した事例を見て・聞いて、これは自社に良さそうだということであれば「あり」を、自社には合いそうもないと判断できれば「なし」とします。

「あり」と判断しても最終的に導入するかどうかは詳細な検討が必要になると思いますが、自社がとりうる選択肢としてキープしておければよいのではないかと思います。

また、「あり」と判断した理由をすこしまとめておけると良いと思います。「良かったこと」「悪かったこと(課題になりそうなこと)」という軸で整理しておき、今後の導入検討の際の判断根拠に使えればよいでしょう。

まとめ

自社でシステム導入をする際にできることのひとつに先行事例を調べる、というものがあります。

システム導入のはじめは手がかりのような道標がときには必要になります。

その手がかりのひとつが先行事例ではないかと思います。

先行事例を調べることで、自社のすすむ方向性が見えたら幸いです。